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第7号配信「21世紀臨調が国会議員・知事・市長緊急アンケートを公表しました」(2006.5.22)

21世紀臨調は5月21日付けで、「日本の将来と国・地方のあり方に関する国会議員・知事・市長緊急アンケート」の調査結果を公表しました。

アンケートは大詰めを迎えている経済財政諮問会議の骨太方針策定や秋の小泉内閣退陣、与野党党首選挙などの重要政治日程を踏まえ、三位一体改革の今後の進め方や中央・地方政府改革のあり方について、改革推進の当事者である国会議員、知事、市長の認識を改めて把握するために実施されました。

調査期間は本年4月。調査対象は欠員1名を除く衆参両院の全国会議員721名、都道府県知事47名、市長779名、東京23区長の計1570名。調査方法は調査票の郵送発送・郵送回収法。有効回答者数は963名、有効回答率は61.3%でした(国会議員45.8%、知事93.6%、市長72.8%、区長95.7%)。

詳しくは報告書をご覧いただきたいのですが、今回のアンケートでわかった国会議員、知事、市長の現状認識を簡単にご紹介してみたいと思います。

1.中央省庁の再々編やスリム化は必要か
最初に、中央政府の改革です。「時代の変化を見据えて中央政府の役割や機能を見直し、中央省庁の再々編やスリム化をさらに進めるべきだとの意見があるがどう思うか」と質問したところ、国会議員87.0%、知事93.2%、市長88.2%が「そう思う」(進めるべきだ)と回答とする結果となりました。「そうは思わない」と回答したのは市長4名のみでした。


 
2.分権改革は省庁再々編の有効手段か
そこでさらに、「中央政府の改革については、地方分権改革こそが中央官僚機構の既得権益に切り込む構造改革の核心であり、省庁再々編やスリム化を進める最も有効な手段であるとの意見もあるが、どう思うか」と質問したところ、国会議員の70.9%、知事75.0%、市長66.7%が「そう思う」と回答する結果となりました。



3.分権改革は行財政改革の道筋か
次に、やや視点を変えて分権改革と国・地方の行財政改革の関係を質問してみました。「現在、国・地方の借金は800兆円に迫ろうとしているが、中央集権型から地方分権型に国のかたちを大きく転換することが簡素で効率的な行財政システムを構築し、財政規律を確立する道だという意見もあるが、どう思うか」と質問したところ、知事79.5%、市長64.9%が「そう思う」と回答。こ
れに対し、国会議員は46.4%が賛成するにとどまり、51.2%が「一概に言えない」と回答する結果になりました。政党別でも、自民党は50.0%が「そう思う」と回答する一方、47.8%が「一概に言えない」と回答。また民主党も53.2%が「一概に言えない」と回答し、「そう思う」と回答した44.1%を上回る結果となりました。



4.三位一体改革の目的に合意はあったか
中央政府の改革に続いて、小泉内閣が平成16年度から進めてきたいわゆる「三位一体改革」についていくつかの質問を試みました。先ず、「ここ数年の報道で三位一体改革という言葉自体はそれなりに定着しているようにも思うが、その目的については、国と地方との間でどの程度の合意が形成されていると思うか」と質問したところ、国会議員51.5%、知事86.4%、市長58.8%が、国と地方の間でしっかりとした合意は形成されてこなかったと回答する結果となりました。



5.第1期改革の決着内容の評価
三位一体改革は昨年末、4兆円規模の国庫補助負担金を削減し、地方に3兆円規模の税源移譲を行うことで決着しました。そこで、この決着内容を現時点でどう評価しているかを改めて質問したところ、国会議員は52.8%が「評価している」と回答、43.6%が「評価していない」と回答する結果となりました。一方、首長側は、知事の63.7%、市長の44.8%が「評価していない」と回答する結果となりました。



6.分権改革は小泉後継内閣の最重要課題か
小泉内閣は平成19年度以降も三位一体改革を継続する方針を確認しています。一方、地方側も昨年末に決着した三位一体改革はあくまでも第1期と位置づけ、第2期改革の推進を求めています。そこで、小泉内閣は本年秋に退陣することを踏まえ、「地方分権改革はポスト小泉内閣の最重要課題の一つか」と質問したところ、国会議員の82.7%、知事の95.5%、市長87.7%が「そう思う」(新内閣の最重要課題)と回答する結果となりました。政党別に見ると、自民党は77.5%が「そう思う」と回答、「そう思わない」と回答した3.3%を大きく上回る結果となりました。また連立を組む公明党も93.8%が「そう思う」と回答しています。



7.地方交付税の総額は維持か抑制か  
次は、第2期三位一体改革の論点です。先ず、地方交付税については、「厳しい国の財政状況等を踏まえると総額を削減していくべきだ」という意見と、「国の法令で地方に義務付けている業務が大半を占める現状では住民サービスを担う自治体の安定的財政運営に必要な総額は確保されるべきだ」という二つの意見があるが、どう思うかと質問したところ、知事86.4%、市長81.5%が総額を維持すべきだと回答したのに対し、国会議員は38.8%が「総額を維持」、20.3%が「削減」、39.1%が「一概に言えない」と回答、意見が割れました。



8.さらなる税源移譲の推進と国庫補助負担金の廃止
第1期改革では約3兆円規模の税源移譲が実現しましたが、税源配分を国と地方の最終支出の実態に即した形に見直していくため、地方への更なる税源移譲が必要かどうかを質問したところ、国会議員79.4%、知事95.5%、市長92.7%がそう思う(必要)と回答する結果となりました。また、第1期改革では約4兆円規模の国庫補助負担金が廃止されましたが、第2期改革でもさらなる国庫補助負担金を廃止すべきかどうかを質問したところ、国会議員の79.7%、知事の72.7%、市長の75.3%が「そう思う」(賛成)と回答する結果となりました。



9.国と地方の協議の場 
平成16年8月に地方6団体が三位一体改革の前提として国と地方の協議機関の設置を求め、これを小泉首相が受けとめる形で、いわゆる「国と地方の協議の場」が設けられています。そこで、第2期改革にあたって、現在の「国と地方の協議の場」は今後どうあるべきかを質問したところ、国会議員の43.9%が「法制化などさらに制度として確立すべきだ」と回答、43.3%が「現在の協議の場をこれまで同様に継続すべきだ」と回答する結果になりました。「今後、協議の場は必要なし」と回答した議員は1名にすぎませんでした。政党別に見ると、自民党の59.9%、公明党の68.8%が現行方式の継続を、民主党の79.3%がさらなる制度的な確立を求めています。一方、地方側は知事81.8%、市長61.4%がさらに制度として確立すべきだと回答しています。  



10.地方制度調査会の道州制答申                        
次に、道州制です。本年2月末、第28次地方制度調査会は市町村合併等の進展を踏まえ、今後の広域自治体のあり方として「道州制の導入が適当である」という答申を公表しました。そこで、この答申についての評価を最初に質問したところ、国会議員の59.1%、知事の43.2%、市長の64.2%が評価できると回答する結果となりました。政党別では、自民党の73.6%、公明党の93.8%が評価できると回答したのに対し、民主党議員で評価できると回答したのは35.1%にとどまり、54.1%が「一概に言えない」と回答しています。



11.道州制と統治機構の変革
調査会の答申は、身近な生活に関する施策は市町村が担い市町村では対応できない広域行政を道州が行なうことで、国の仕事を外交、防衛、経済、社会保障など国や国民生活の基本に関わる施策に重点化するとしています。そこで次に、「道州制は中央政府・地方政府全体の再構築や統治機構の変革につながると思うか」と質問したところ、国会議員の62.4%、知事の54.5%、市長の69.0%が「そう思う」と回答する結果となりました。その一方で、「一概に言えない」という回答も、国会議員の33.3%、知事の34.1%、市長の26.3%を占めました。



12.道州制に対する中央官僚の抵抗
次に、「道州制の実現性については、権限を失う中央官僚がこれまでの三位一体改革とは比較にならないほどの反発や抵抗を行なうのは必至なので、困難を極めるのではないかとの見方があるがどう思うか」と質問したところ、国会議員の76.7%、知事の79.5%、市長の73.7%が「そう思う」(困難を極める)と回答する結果となりました。



13.道州制論議と今後の分権改革の道筋
次に、道州制論議が本格化した場合、当面の分権改革の進め方との関係をどう整理すべきかを質問したところ、国会議員は25.5%が「今後さらなる権限・税源移譲は道州制など中央・地方政府全体の再構築実現との同時決着をはかるべきだ」と回答、38.8%が「道州制と来年度以降の権限や税源の移譲を並行的に議論を進め、短期、中期、長期の中央政府・地方政府の改革工程表を確立した上で当面の権限や税源移譲を実現すべきだ」と回答、29.7%が「権限や税源移譲が先送りされる事態を避けるためにも、道州制論議とは切り離して来年度以降も着実に権限や税源移譲を進める道筋を先ず優先的に確立すべきだ」と回答、意見が割れていることが明らかになりました。一方、地方側は、知事の45.5%、市長の51.9%が「来年度以降も着実に権限や税源移譲を進める道筋を先ず優先的に確立すべきだ」と回答、次いで、知事の36.4%、市長の35.4%が「短期、中期、長期の政府改革の工程表を確立した上で当面の権限や税源移譲を推進」と回答する結果となりました。



14.自治体の破綻法制
次に、自治体の破綻法制です。現在の地方自治体の財政再建制度としては、地方財政再建促進特別措置法があり、起債制度とあわせ自治体の債務不履行を防止する仕組みが準備されています。こうした中にあって、現在、総務大臣の私的懇談会では、地方団体の財政の健全化を進めるためには市場による規律を高める必要があるとして、自治体にも民間企業のように借金が返済不能に陥った場合の債務処理や再生方法を定める「破綻法制」の検討を進めていますが、自治体にもこのような「破綻法制」の導入が必要かどうかを質問したところ、国会議員の51.5%が「新たな法制度を作り、自治体の財政規律を高める必要がある」と回答、「現行の地方財政再建促進特別措置法を一部改正することで十分対応できる」と回答した21.8%を上回る結果となりました。「現行制度で十分であり見直しの必要はない」という意見は1.8%にすぎませんでした。これに対し、知事は63.6%が「一概に言えない」と回答、新たな法制度の策定を求める意見は4.5%にとどまりました。



15.地方議会や地方議員の改革
次は、地方議会改革。現在の地方自治法が制定されて50年以上経過しているにもかかわらず、地方議会の制度的な見直しはほとんど行われていません。そこで、「今後の分権改革の進展を考えた場合、地方議会や地方議員のあり方を改革すべきだという意見もあるがどう思うか」と質問したところ、国会議員の88.8%、知事の54.5%、市長の75.7%が「そう思う」(改革が必要)と回答する結果となりました。知事の36.4%、市長の22.6%は「一概に言えない」と回答したものの、「そう思わない」という回答はほとんどありませんでした。


16.ローカル・マニフェスト
最後は、ローカル・マニフェストです。2003年の統一地方選挙以来、首長選挙において数値、期限、財源などを明記した選挙公約を「ローカル・マニフェスト」と呼び、これまでの選挙公約とは質的に一線を画すものとして有権者に提示する候補者が増えています。そこで、こうしたローカル・マニフェスト運動の進展は、地方政治や自治体行政を変えると思うかと質問したところ、国会議員85.2%、知事79.6%、市長77.8%が「変わる」と回答する結果になりました。また、現在の首長選挙では、国政選挙のようにビラの頒布が認められていないため、候補者がローカル・マニフェストを作成しても有権者に伝えるための手段はきわめて限定されたものとなっている現状を踏まえ、公職選挙法を改正し、首長選挙のおけるビラの頒布を解禁することに賛成か、反対かと質問したところ、国会議員の70.6%、知事の65.9%、市長の60.0%が「賛成」と回答する結果となりました。



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分権改革全般について国会議員、知事、市長に同じ質問文で調査を試みたのは、おそらく今回のアンケートが初めてではないかと思います。中央政府・地方政府を貫く政府全体の再構築をどう進めるか、まさに課題山積です。なお、今回のアンケート結果について、21世紀臨調共同代表の佐々木毅先生、西尾勝先生、副代表の増田寛也岩手県知事、主査の飯尾潤先生が次のようなコメントを寄せていますので、ご紹介します。

■ 佐々木毅 21世紀臨調共同代表(前東大総長)
政治システム全体にとって地方分権改革の持つ意味合いについて、国会議員と首長との間で基本的に共通の認識があることが分かった点が何よりも興味深い。また、これまでの三位一体改革の成果についてはなお不十分であり、今後も最重要課題であるという点についても概ね共通の理解が見られた。地方交付税などの扱いや地方の行財政改革の進捗状態については相違が見られるが、これは立つ位置の違いに帰せられよう。厳しい財政状況の中で中央・地方両政府が共倒れ的に衰弱し、弱体化するのを防ぐためには早急に中央・地方政府の役割を明確にする作業を基礎とした大胆な改革が必要である。そのためには先ず公務員制度改革を含め中央政府のあり方について政治がもっと積極的な構想力を発揮することが不可欠であり、問題解決を中央・地方の綱引きに任せていることの限界を改めてはっきり認識することから新たに出発し直すべきである。

■ 西尾 勝 21世紀臨調共同代表(東京市政調査会理事長)
1)三位一体改革関係の設問に対する回答では、知事の回答と国会議員および市長の回答との間にかなりの開きがある。この改革に賭けた知事たちの熱意と真剣さ、そしてその帰結に対する失意の深さに比べ、国会議員および市長の態度はまだ多分に傍観者的である。2)知事および市長の約半数は第2期三位一体改革の遂行を当面の最優先課題としているのに対して、国会議員では早くも三位一体改革と道州制論議とが混線し始めていて、当面の改革の道筋についてのコンセンサスが崩れて来てしまっている。憂慮すべき事態である。3)知事および市長の回答と国会議員の回答の間に大きな落差があるものは、地方行革の進捗度合の評価、地方交付税問題、国と地方の協議の場の法制化等々少なくないが、なかでも地方議会・地方議員の改革を必要とする国会議員が88.8%にも達していることは目を引く(知事では54.5%、市長では75.7%)。これを政党別にみると、民主党96.4%、自民党85.7%、公明党81.3%で、地方議員を後援会組織の中核にしている自民党国会議員においてさえ、地方議会・地方議員を見る目は冷たい。
国会議員と地方議員の間で率直な徹底討論が行われるべきではないか。4)ローカル・マニフェスト運動の効果については知事および市長よりもむしろ国会議員の方が高く評価していて、首長選挙におけるビラの頒布解禁に賛成する比率も国会議員の方が高く、70.6%に達していることは、マニフェスト選挙の普及と発展に希望を抱かせる。

■ 増田寛也 21世紀臨調副代表・知事市町村長連合会議座長(岩手県知事)
1)中央省庁の再々編や今後の分権改革についての期待が、国会議員や知事・市長を通じて、高いという結果が出たことは注目される。これらはまさに政治課題であり、まず、議論の場づくりから抜本的に見直して、取り組んでいく必要がある。2)三位一体改革の第1期に対する評価は、知事・市長のみならず、国会議員も、厳しいものがあった。これは、改革の内容が地方側の自由度や裁量の拡大につながるものが少なく、国の補助負担率の切り下げによるものが大半を占め、分権改革という文脈では見るべき成果が乏しく、財政再建という側面のみが強調された結果と言える。3)いずれにしても、今後の第2期改革への期待も高いことから、ポスト小泉内閣でも、この問題は、引き続き重要施策として取り組むべき課題である。9月に予定されている自民党、民主党の党首選挙では、候補者が中央政府や地方政府のかたちや今後の分権改革のあり方、進め方について、明確な考え方を示さないと国民の大きな失望を招くのではないか。4)同時に、地方側も、人員削減など、自ら徹底した行財政改革を進めるとともに、住民とともに汗をかき、知恵を出し合いながら地域を作り上げていくことが求められている。

■ 飯尾 潤 21世紀臨調主査(政策研究大学院大学教授)
地方分権が具体化し、さまざまな選択肢が開けてきたため、関係者にとまどいが広がっている様子が現れている。これまで国会議員、知事や市長いずれも分権推進を掲げながら、実態としては分権推進委員会などの動きに先導され、また経済財政諮問会議を舞台に開始された三位一体改革などは、むしろその対応に追われることになった。そうした動きが一段落した現在、分権が複雑な課題であり、その推進を言うだけでは状況が改善しないという認識がとりわけ首長側に広がっている。それゆえ分権推進策について、知事と市長など各レベル内でも意見が割れる項目が多い。関心が高いはずの具体的な分権案に関して一概にいえないという答えが地方側で多いのは、具体策が固まるまでは安心できないという不信感が強いためではないかと推測される。なお、地方選挙においてもマニフェスト配布を可能にするための公職選挙法改正には、国会議員の多くが賛成しており、改正の可能性が開けていることが示唆されている。

                                 (前田 和敬)



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