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神吉信之のロカマニ日記
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ローカル・マニフェスト推進ネットワーク九州代表として奮闘中の神吉信之さんのコーナーです。神吉さんは福岡在住のジャーナリスト。「ローカル・マニフェストを片手に日本を変える」。そんな思いを胸に、九州各地で公開討論会を仕掛ける神吉さんの日々を日記風にご紹介します。公開討論会のエピソードや神吉さんの仲間たちも登場します。
 「官製談合の根を絶て〜宮崎県知事選マニフェスト型公開討論会報告」 (2007/2/2)
新年あけましておめでとうございます。

今年は春には統一地方選、夏には参議院選とマニフェスト普及にとっても大きな選挙が立て続けにありますので、昨年よりいっそう気を引き締めて頑張ろうと思っています。
昨年に引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

さて、年始の挨拶もそこそこに、恐らく本年度初と思われるマニフェスト型公開討論会が1月3日に宮崎県知事選にて開催されましたので、簡単な報告をしたいと思います。

ご存知のように安藤前知事の官製談合事件による逮捕によって、急遽出直し選挙となったわけですが、最大の争点は談合防止策をいかに講じ、県の信頼回復に努めるか、です。

安藤前知事は無所属で当選し、しがらみがない知事として、改革の歩を大きく進めることができる人物と期待されていただけに、事件の一報を聞いた県民は、「安藤さん、お前もか」と、耳を疑ったほどと聞きます。

それだけに根が深く、どの自治体にも潜んでいる問題だとも思います。そこで、今回私が討論会で「公共工事談合防止策」について質問した内容を下記に記しますので、今後の討論会の参考にして頂ければ幸いです。

まず、最初に1. 今回の事件の問題の所在はどこにあるのか?選挙における貸し借り関係を作らないために、どうしているのか?県政(政治と行政)と建設業との関係をどう整理するのか、という考えを聞くところから始めました。

次に、入札制度改革では全国知事会の改革指針案を出しているので、これを基準にして2. 宮崎県ではどのように改革(入札方法、地場企業の優先(地域要件)や工事技術の策定方法(条件付き、制限付き))を進めるのか、を聞きました。

「全国知事会の改革指針案」

<1>指名競争入札を早期に廃止し、当面、予定価格1000万円以上の事業は原則として透明性の高い一般競争入札にする。
<2>入札者が事前に把握されにくい電子入札を3年以内に導入する。
<3>談合した業者は1年以上、入札参加停止にするなど懲罰を強化する。

ただし、入札制度だけ聞くと、一般入札の拡充を各候補予定者は各々唱えるだけとなります。また、業者内談合はなくなっても、官製談合は和歌山県のようになくならないようです。

和歌山県では(業者の提案を自治体が審査して選ぶ)プロポーザル方式や(業者を公募し、一定の技術力や意欲がある業者を指名して入札する)公募型指名入札を導入するなどして、落札率は90%程度にはなっていました。業者内談合はなくなりましたたが、利益を無視した落札率50%など業者のたたき合いが起き、そこで官が業界を守る官製談合が横行するようになったそうです。そして、官製談合の根っこには「地元企業育成」という倫理があります。

そこで、3. チェック機能(議会、評価と情報公開、公益通報(内部通報)制度、懲罰
など)をどのように働かせるか?を聞きました。

民間による第三者機関を設けるなどの意見があり、その中にそのまんま東氏のコンストラクションマネジメント案がありました。CMに関してはアメリカでは一般化していると、その可能性について私が示唆しました。

懲罰については、知事会の改革の指針では業者に対してだけしか言及されていませんので、関わった職員に対してはどうなのか、も聞きました。アメリカでは職員に対しても厳重な処罰があり、10~20%の返還が求められます。

グローバル化が叫ばれてからずいぶん経ちますが、国際基準から考えると、いかに日本が手ぬるいか、ということだと思います。

公益通報に関しては、12月22日の朝日新聞朝刊に告発窓口に関して47都道府県15指定市調査をした結果が発表されており、それを参考にしました。

談合や汚職などの不正や違反行為の内部告発者を報復人事などから守る公益通報者保護制度に関して:

59の自治体で窓口設置
11の自治体(大阪府、名古屋市、福岡市など)で内部窓口に加えて弁護士事務所にも窓口を設置、横浜市、広島市は窓口を弁護士事務所に一本化。東京都は現職の総務局長が理事長を兼ねる関連団体を外部窓口として設置。

大半が「内部窓口」のみで、人事・総務担当課が窓口と調査責任者を兼ねていて、知事や幹部職員の不正を防ぐ仕組みが機能していない。
前知事が逮捕された福島県では窓口そのものがなかった。
宮崎県は各部に窓口があったが機能してなかった。

外部窓口を設けている14自治体の内9自治体で、職員の通報があがっている。
大阪市 266件 静岡県、横浜市 31件など 総数 375件

大阪市昨年11月、300人以上の職員による総額5000万円の住居手当の不正受給 横浜市昨年8月、01〜05年度にかけバス事業で赤字が出たように装って、各年度約1億5000万〜4億円の補助金を不正受給など。

外部窓口がない45自治体では通報の実績が乏しく、34自治体で0、不正行為の摘発につながっていない。

朝日の報告に対して、宮崎県ではどのような窓口を設置するのか、を聞きました。

最後に、4. 信頼回復に向けて(天下り抑制などの構造的な体質改善策(関連団体も含めた県組織の見直し・意識改革)など)どのように努めるのか?を聞きました。

ここでは、新政福島県での取り組みを事例に挙げました。

福島県での改善策 今回の事件で公共工事の見積価格などが漏れていたとされ、県の外郭団体「県建設技術センター」について、県土木部幹部OBが同センターの役員に就くことを禁じ、県からセンターへの業務委託や役職員派遣も取りやめるそうです。

ついでながらですが、事業の効率化を図るためには、個別事業ベースで、広域化によるものも増やす必要があるようにも思います。また、アメリカのように一般公債だけではなく、レベニュー・ボンド(プロジェクト・ボンド)などで、民間や市場で公共事業(特に開発事業)ものの価値が問われるような仕組みがつくれないか、このような事も私から示唆しました。

ただ、防止法を敷いて厳しく対処しないといけませんが、宮崎県のように公共事業に依存し、土木建設業者が多い自治体はまだまだ全国各地にあり、交付税の激減にもかかわらず、その数はそんなに変わらないという現状があります。

改革を実施すれば、県単位では多くて数百億円の節税につながる一方で、大量失業者を招く恐れがあります。そこには新たな受け皿づくりを考える必要があります。

宮崎県の場合、建設業の他に観光、農業の比重が高いので、それらの活性化策、そして、これら以外の新しい産業の可能性などもしっかり討論しました。

後日、ある新聞社の記者から電話があり、あれから各候補が自らの政策を見直し、きちんとしたマニフェストを提出すると聞いて、年末年始を返上してマニフェスト型公開討論会に臨んだ甲斐があったと実感しています。

いくら大声で財政再建と叫んでいても、陰で談合をして税金の無駄遣いをしていては、何にもなりません。

候補者の改革案が本物かどうか、公共事業談合防止策に真剣に取り組む姿勢があるかどうか、大きな試金石となるに違いないと思います。

最後になりましたが、この場を借りて、主催者の日本青年会議所九州地区宮崎青年会議所を大いに称えたいと思います。

メンバーの多くに土木建設関連の業者がいるにもかかわらず、勇気を持って今回マニフェスト型公開討論会を開催していただきました。宮崎県においては初の開催となりますが、大きな一歩を踏み出したと思っています。君たちの勇気が全国各地に新たな勇気をもたらすことを願っています。

 ■略 歴■
 神 吉  信 之(かんき のぶゆき)
 1957年11月4日生まれ、福岡在住のフリー・ジャーナリスト。
 米国スタンフォード大大学院ジャーナリズム学科修了。
 元北米毎日新聞サンフランシスコ支局記者。
 現在は、福岡県在住で、選挙情報専門サイト「Election」の
 コラムニスト、ローカル・マニフェスト推進ネットワーク九州
 代表、ラジオ、テレビの選挙・政治専門のコメンティター、
 NPO活動等幅広い活動を行っている。
 著書に、『21世紀の日本人たちへ・・・』(文芸社)など。
 < 専 門 > 政治、選挙、公共政策・経営、NPO、まちづくり、地域通貨

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