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神吉信之のロカマニ日記
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ローカル・マニフェスト推進ネットワーク九州代表として奮闘中の神吉信之さんのコーナーです。神吉さんは福岡在住のジャーナリスト。「ローカル・マニフェストを片手に日本を変える」。そんな思いを胸に、九州各地で公開討論会を仕掛ける神吉さんの日々を日記風にご紹介します。公開討論会のエピソードや神吉さんの仲間たちも登場します。
 統一地方選 その時、その後 (2007/6/15)
先日熊本県御船町へ行ってきました。新町長の山本孝二さんに当選後のマニフェストを基軸とした自治体経営に関して、アドバイスをするためです。勿論、マニフェストの事後検証・評価に関してもです。このことも、LM推進ネットワーク九州としての大切な役割の一つです。
1月からマニフェスト型公開討論会のラッシュで忙しくしていて、皆さんには大変ご無沙汰しています。

今回の統一地方選において、公職法の一部改正によりローカル・マニフェストが選挙時にも配布可能となりましたので(とはいえ制限付きですが)、全国で数多くのマニフェスト型公開討論会が開催されたことと思います。

LM推進ネットワーク九州が支援した首長選は、本年度に入って13ヵ所。1月は、宮崎県知事選、福岡県久留米市長選、福岡県北九州市長選、福岡県筑紫野市長選、福岡県大木町長選。2月は、佐賀県鳥栖市長選、福岡県みやま市長選。3月は、福岡県直方市長選、佐賀県知事選。4月は熊本県人吉市長選、長崎県佐世保市長選、福岡県田川市長選、熊本県御船町長選においてです。

議会に対しても変革を促すアプローチがありました。福岡県では、筑後市議選、大牟田市議選、大川市議選において、地元の青年会議所が議員アンケートを採り、HP上で公開しました。大木町議選で、マニフェスト型公開討論会を地元住民が開催。鹿児島県では、霧島青年会議所や指宿青年会議所が合同演説会を開催しました。

このような動きの中で、マニフェスト型公開討論会の意義などについて、改めて考えさせられることがありましたので、何回かに分けて紹介したいと思います。

今回は町長選にも「政策本位」でと、町民有志の主催で開催された熊本県御船町長のマニフェスト型公開討論会を紹介したいと思います。御船町は、恐竜の化石が発掘されたことで、恐竜の里として知らています。町役場に恐竜博物館が隣接しています。熊本市内から南西に車で30分。人口2万人弱の小さな町です。3年前に合併の賛否を問う住民投票が実施されましたが、住民は単独を選んでいます。

ここでは青年会議所ではなく、46人の御船町民有志たちが自主的に集まり、「明日の御船を考える会」実行委員会を立ち上げ、カンパ金によって運営されました。

昨年末から青年会議所や民間有志の方々からマニフェスト型公開討論会の開催について相談を数多く受けましたが、実際に開催できたのはその半数ほどです。御船町の状況を良く知る熊日新聞のある地域報道記者は、「普通の公開討論会も開かれたことがない御船で、まさかマニフェスト型が開かれるとは思いもしなかったことです。改めてこの町の住民力を見直しました」と、感心していました。

「このままではいけん」「変えんといけん」という町民有志の方々の変革への強い思いが、様々なプレッシャーを跳ね返して、開催まで漕ぎ着けたのだと思います。不満の多くは、十分な説明がないまま進む行政計画に対してと、行政への市民参加・参画に対してでした。だからこそ、政策をマニフェストで示してもらい、町民が政策選択をできるように、という思いからです。

当日は500人収容のホールに830人の来場者があり、2階のTVモニター室も満杯で溢れ、廊下で聞いている人もいたそうです。当日アンケートの収集結果も「大変良かった」「良かった」と合わせて80%を超え、初めて「大変良かった」が50%を超えました。

御船町初のマニフェスト選挙を制して、見事新町長になられた山本さんですが、選対では「マニフェスト作成のためにエキスパートを雇ったらどうか」という意見もでたということですが、「一人で作成する」と言って、ネットで他自治体の首長さんたちのマニフェスト事例を研究し、私とのメールのやり取りを通し、マニフェストを完成させていきました。

LM推進ネットワーク九州では、立候補表明者を一同に集め、事前説明会を主催者と一緒に行うのですが、その際、マニフェストの作成に関するアドバイスもします。また、完成するまでの期間、メールでアドバイスも行っています。

最初からそうしているのではなく、3、4回こなして行く内に、「これでは具体性がなく、事後検証が難しい」「これでは討論に時間がかかる」と思ったからです。

マスコミからは「そのままの方が資質が分かっていいのでは」という意見も出ますが、
政策のレベルアップを図る目的で、このようにマニフェスト作成の支援もしています。

熱心な立候補表明者は幾度となくアドバイスを求め、マニフェストをより良いものへと書き直しをしますが、山本さんもその一人でした。

更に感心なことに、山本さんは当選直後の挨拶回りを、対抗馬の後援者からしたそうです。選挙は3人の新人候補が争うという構図でしたが、山本さんと前町長が支援する候補との事実上の一騎打ちとなりました。両有力候補とも前町役場の職員でした。小さな町なので、遺恨が残らないようにと、配慮してのことだと思いますが、なかなかできないことだと思います。

西日本新聞のある地域報道記者の取材によると、住民の方々は熱心にマニフェストを読み比べ、投票の際の判断材料にしていた、とのこと。小さな自治体でありがちな怪文書も今回は飛び交うことはありませんでした。山本さんは、「御船は小さな町ですから顔や人柄は知られています。だからこそ、住民の多くはマニフェストで政策の違いを見比べ判断した、と思います」と、マニフェストが選挙の決め手になったことを強調していました。

マニフェストを自治体経営に反映させるための第一歩として、首長のマニフェストに対していかに職員と意識の共有化できるか、ですが、山本さんはすでに全職員にマニフェストと共通のフォーマットを配って、各職員にマニフェスト実現のための目標を書かせていました。それを元にこれから職員とマニフェストの検討会を始めるようです。

小さな町でまた一匹北京の蝶々が大きく羽ばたくのを見た思いがしました。

 ■略 歴■
 神 吉  信 之(かんき のぶゆき)
 1957年11月4日生まれ、福岡在住のフリー・ジャーナリスト。
 米国スタンフォード大大学院ジャーナリズム学科修了。
 元北米毎日新聞サンフランシスコ支局記者。
 現在は、福岡県在住で、選挙情報専門サイト「Election」の
 コラムニスト、ローカル・マニフェスト推進ネットワーク九州
 代表、ラジオ、テレビの選挙・政治専門のコメンティター、
 NPO活動等幅広い活動を行っている。
 著書に、『21世紀の日本人たちへ・・・』(文芸社)など。
 < 専 門 > 政治、選挙、公共政策・経営、NPO、まちづくり、地域通貨

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