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神吉信之のロカマニ日記
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ローカル・マニフェスト推進ネットワーク九州代表として奮闘中の神吉信之さんのコーナーです。神吉さんは福岡在住のジャーナリスト。「ローカル・マニフェストを片手に日本を変える」。そんな思いを胸に、九州各地で公開討論会を仕掛ける神吉さんの日々を日記風にご紹介します。公開討論会のエピソードや神吉さんの仲間たちも登場します。
 地方分権と地方議会の展望〜マニフェスト時代を迎えて〜 (2007/9/4)
9月27日(月)、第10回福岡県市議会議長会の議員研修会が福岡市で開かれ、北川さんとセットでローカル・マニフェストの講師として呼ばれました。
同県内の市議(出席率約80%)や議会事務局職員約700人が参加。最後まで熱心に耳を傾けていました。

北川さんが、「地方分権と地方議会の展望〜マニフェスト時代を迎えて〜」と題して、1995年に成立した地方分権推進法から現在までの分権改革の流れを説明し、経営感覚が求められる地方自治体の中で議員に政策立案能力を磨くことを訴えました。

北川さんの講演後、私が「ローカル・マニフェスト先進地〜九州の現場から」と題し、マニフェスト選挙がもたらす効果や九州の現状を説明しました。

九州のマニフェスト首長としては今まで佐賀県知事の古川さんが牽引していましたが、同県武雄市長の樋渡さん、宮崎県知事の東国原の出現で、俄然面白くなってきました。

佐賀県は、一部を除いたほぼ全業務の2027業務を協働化テスト(市場化テスト)に今年からかけます。また武雄市では観光客が昨年度比較で3割増の150万人と増えています。今年4月に行政では全国初となる営業部を開設し、更なる飛躍を考えています。宮崎県の入札改革は、全国知事会で昨年提案されたものの上をいくもので、段階的に250万円以上を一般入札にし、罰則も知事会では一年の参入停止処分を二年とするとし、改革への意気込みを示しています。

北川さんと私のアジテイト(笑い)によって、今後の地方議員へのLM活動拡大には良い契機になったと思います。

住民が事前評価にあたるマニフェスト型公開討論会を開き、事後評価もするとなると、首長と住民との間で議会・議員は置いていかれるかもしれません。ローカル・マニフェストが、議会・議員の存在意義が問いかけます。

議員の一人からこんな質問がありました。「議会・議員マニフェストはどこまで要求されますか」

執行部である行政が情報を握っているので、細かい数値目標や財源などを書き込むことは困難な事かもしれません。

先ずは、首長マニフェストをしっかり分析し、ビジョンや方向性は正しいのか?補足すべきことはないのか?財源の担保は?予算は十分か?逆に多くないか?数値目標は妥当か?工程表は示されているのか?そもそも住民ニーズや地域性に適しているのか?という検証をすることから始め、ビジョンや方向性で違う選択肢を示す必要があったり、項目によって選択肢を増やしたり、修正、補足をする必要がある場合は、首長マニフェストを軸にして市政や県政に関する考えを
選挙時に明確にすることではないでしょうか。

福岡市長選が昨年11月、議員選挙が今年統一地方選時に行われましたが、市長のマニフェストを軸に議会(実際は会派でしょうが)・議員で、そのスタンスを明示し、補完的な意味でのマニフェストは書ける、と思います。また、そのプロセスの中で議員条例案が浮かんだらそれも明記するようにします。

議員の中でも分野に得て不得てがあるでしょうから、環境に強い議員は環境に特化、子育てなら子育てに特化し、得意分野のマニフェストを書いてみるのもいいのではと思います。ローカル・マニフェストを練習台として、議員の政策立案能力に磨きをかける。それが地方議員の信頼回復につながるのではと思います。

先月、大分県日田市長選で日田青年会議所主催でマニフェスト型公開討論会が開かれました。
争点に、地域経済活性化の手段としての「企業誘致」と、行財政改革の推進として「消防署の統廃合」問題がありました。

日田市には林業、そして、水郷、温泉があり、観光地としても、九州では名が知られていますが、大分県の中で地域経済が沈滞気味です。そこで浮上してきたのが企業誘致で、ダイハツ工場が来たことで景気が良くなった中津市などを例に挙げます。日田にはサッポロビール工場がありますが、「更なる企業誘致で」ということです。

しかしながら、過去の企業誘致の実情を調べてみましたが、税制など優遇措置の時期が終わると大半の企業が日田から出ていっています。起爆剤にはなっていますが、長期的な経済浮揚策につながってはいません。

日田市に合った企業誘致とは何なのか?という議論を討論会では行いましたが、このような現状を踏まえ、議会や議員で調査・研究し、マニフェストとして発表するなどすると、奥深い議論ができるのでは、と思います。
「企業誘致」は、どの首長マニフェストにも例外なく書かれていますが、そのことで地場企業が育つことにつながり、強いては新産業への足どころができるとか、長期的な戦略が必要だと思います。

「消防署の統廃合」は、合併を伴う市町村での共通の問題だと思いますが、「生命財産を守ることに関することだから維持する」という理由で、反対を訴える候補もいます。特に、救急患者輸送要請の際、到着に時間がかかることへの危惧です。
しかし調べてみると、新潟県の西部広域消防事務組合消防本部では救急自動車の平均到着時間が最大で五分早まり、平均鎮火時間が十分早まった、という広域化のメリットも報告されています。
行財政改革が進む中で、自治が問われる一方で、このような問題にどう答えるのか、ここでも
調査・研究することができれば、もっと奥深い議論を戦わせることができるのではと思います。

さて長くなりましたが、今回の参議院選で一人制選挙区で自民が惨敗した結果を観ると、年金問題や政治とお金の問題もさることながら、今後の地方のあり方が大きな問題になっていることは間違いありません。

日田市長選で2つの例を挙げましたが、その他限界集落が大分県は全国でも多い県として知られ、日田市もその例外ではありません。また、長崎県の島原半島(島原市、南島原市、雲仙市)のように20年後の人口減少率が50%にも上る地域もあります。

多くの問題を抱える地方にとって、地方議員の役割は決して小さくはありません。今後LM推進ネットワーク九州としても、地方議員の方々により一層の奮起を促すような努力をしていきたい
と思います。

最後になりましたが、LM推進の仲間でもある前岩手県知事の増田さんが総務大臣に就任されましたので、この場を借りて、謹んで、お祝いと今後のご健闘を心から祈念しております。

 ■略 歴■
 神 吉  信 之(かんき のぶゆき)
 1957年11月4日生まれ、福岡在住のフリー・ジャーナリスト。
 米国スタンフォード大大学院ジャーナリズム学科修了。
 元北米毎日新聞サンフランシスコ支局記者。
 現在は、福岡県在住で、選挙情報専門サイト「Election」の
 コラムニスト、ローカル・マニフェスト推進ネットワーク九州
 代表、ラジオ、テレビの選挙・政治専門のコメンティター、
 NPO活動等幅広い活動を行っている。
 著書に、『21世紀の日本人たちへ・・・』(文芸社)など。
 < 専 門 > 政治、選挙、公共政策・経営、NPO、まちづくり、地域通貨

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